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『実りゆく』 八木監督と主演の竹内一希さんにインタビュー

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「第3回 MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞」で受賞した作品を元に、芸能事務所タイタンのマネージャーである八木順一朗さんが初めてメガホンをとり、若手漫才コンビ「まんじゅう大帝国」竹内一希さんが初主演を務める映画『実りゆく』
長野県のりんご農家を舞台に、お笑い芸人になる夢を追う息子と父親の姿を描いた青春ドラマです。
公開を前に、八木監督と竹内さんにお話をうかがいました!

映画『実りゆく』あらすじ

八木順一朗監督 × 竹内一希さん インタビュー

――今回の作品は「MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞」での受賞から映画化にいたったとのことですが、応募にいたる経緯、長野県のりんご農家をテーマに選んだ理由を教えてください。

八木順一朗監督(以降、八木):
僕がふだんマネージャーとして担当している「松尾アトム前派出所」という、長野県松川町出身でりんご農家に生まれながらお笑いをやっているという芸人がいるんですね。
仕事の関係で4年ほど前に彼の農園にお邪魔することがあって、そのときに初めてりんご農家としての姿や、一面に実ったりんごの姿を見てすごく感動して、いつかこの場所でなにかが実っていくようなお話を作りたいなと思いました。
僕はずっと映画監督になりたいという思いがあって、なにかチャンスがないかなって日頃探していたんですけど、「MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞」を知って、その松尾さんの人生をベースに映像を作って応募すれば、映画監督としての道が開けるチャンスになるんじゃないかと思って参加したのが始まりです。

――もともと映画がお好きだったんですか。

八木:
小さな頃からずっと映画を観ていて、「ゴジラ」が大好きで、毎年ゴジラを観ることだけを楽しみに生きてた子どもでした。
あるときゴジラが映画の中で死んでしまって、もうゴジラを観ることができないと思ったときに、あまりにもつらかったんです。
じゃあ自分が映画監督になって、ゴジラを監督すればもう1度ゴジラに会えると思ったのが、映画監督になろうと思ったきっかけです。
それは今でも変わってなくて、そのまま大人になっている感じですね。

まんじゅう大帝国・竹内一希さん(以降、竹内):
そんな人いるんですね(笑)。

八木:
そうですね、ちょっとやばいですね(笑)。
今でもゴジラの監督をするのが夢です。主役はやっぱり竹内くんで、「竹内 vs ゴジラ」で(笑)

――竹内さんを役に抜擢した理由は。

八木:
竹内くんは東京生まれ東京育ちで今でも実家で暮らしている超シティーボーイなんですけど、ぼくはずっと田舎の青年だと思ってたんですよ。
田舎から夢を追って東京に出てきて一生懸命がんばっているんだと勝手に信じていて、僕が撮りたい作品の主人公にぴったりだと思っていました。
話しているうちに東京生まれ東京育ちで実家でのんびり生きていることがわかって衝撃だったんですけど(笑)。
でもやっぱり竹内くんにしかない人間味というか、人柄の温かさみたいなものがあったので、やっぱり主役でいきたいと思いました。

――竹内さんは本業が芸人で、今までに役者としての経験もありますけど、今回は映画でそれも主役ということで、どう感じましたか。

竹内:
いやまあ、なにを言ってるのかと(笑)。
自身を役者だと1回も思ったことはないので「出ていいんですか」と思いました。
今までは撮影現場に忍び込んで「あの監督怖えな」とか「やっぱり女優さんは綺麗だな」なんて言いながら、いい経験になったなと思うような感じだったんですけど、「映画の主役ということはそうはいかないぞ」ということで、さすがにちょっと大丈夫かなというのはありました。
ただもうね、目立つんで(笑)、目立つのはやっぱり嬉しいですからね、がんばりました。

――不安やプレッシャーはありましたか。

竹内:
今までにない経験でなにもわかっていなかったので、本来は感じるべきプレッシャーや不安はそれほどなくて、「楽しみだな」っていう気持ちでした。
「なんとかなりゃいいけども、知らないよ、大変だよ八木さん」という感じでしたね(笑)。

八木:
僕は主役は竹内くんでいきたいと思っていたんですけど、僕自身も初監督で、この感覚が合ってるかどうかもわからなくて、全部終わったときにとんでもないことになっていたらどうしようって不安はありました。
でも竹内くんならできると信じていて、彼の人間的な魅力や表情、話し方といったものがやはり主役として輝くなと思っていたので、そこを切り取れて作品の中で表現できれば、主役としていけるなという思いはありました。
そういう意味では不安は持ちつつも確信はあったかなという感じですね。

――「まんじゅう大帝国」の相方である田中永真さんとの共演はいかがでしたか。

竹内:
2人して本当にどうしようという感じで、「できないな」ってお互いに1回ちゃんとあきらめました(笑)。
「できない!」「できないか」「でも決まっちゃったからやるしかない」って泣く泣くやりましたけど(笑)。

――役者として見る相方はどうでしたか。

竹内:

彼は普段は本当に温厚な人なんですよ。
めったに怒らないし、非常に冷静な人なので、普段はまったく見ない顔を見たし、怒るシーンを演じているときも本当に「怖っ!」って思ったので、すごいなと思いました。

――劇中で漫才をするシーンがありますが、普段とは勝手が違いましたか。

竹内:

そうですね、普段とはまた違うプレッシャーがありましたね。
芸人が芸人を演じてるので、ネタの部分で「あんまり面白くないな」とか「いまいちだな」ということになると、本当に意味がわからないというか…

八木:
本業にも影響してくるからね(笑)。

竹内:
クビをかけた(笑)、芸人人生をかけた闘いだったかもしれませんね。
ネタはネタとして完成度が高いものを出さないといけないので、本当にそこは練習しました。

――作品の注目してほしいポイント、ここを見てほしいというシーンは。

八木:
『爆笑問題カーボーイ』(爆笑問題がパーソナリティーを務めるラジオ番組)を聴いている方も多いと思うんですけど、爆笑問題さんの登場する場面では『爆笑問題カーボーイ』の空気がそのまま収まっています。
というのも、爆笑問題さんに出てもらうということになって、絶対緊張しちゃうなと思ってだいぶ早い段階で台本を渡してたんですね。
でも台本を読んできてないということが撮影当日に判明しまして、全部のプランが崩れてしまって(笑)。
もうアドリブにするしかないということになって、もう後はお願いしますと言って撮ったのがあの場面なんです。
爆笑問題さんはほとんどアドリブでしゃべっている状態だったんで、だからこそラジオ番組のブースの雰囲気とかリアリティが出て、逆によかったなというぐらいで、爆笑問題さんには助けられたような感じですね。
この場面はファンにはテンションがあがるところだと思います。

竹内:
松尾アトム前派出所さんの実際のお家のリンゴ農園をフルに使ってまして、農業で使う見たこともない機械がたくさん出てくるんですけど、それを見逃さないでいただきたいですね。
屋根のない軽トラとかそういうものがすべて実際に使われている機械で、それが映画の中にちりばめられています。
そういうリンゴ農家のいつもの暮らしみたいなところもたくさん出てくるので、そういうところにも注目して見てもらえたら面白いと思います。

――地元(長野県松川町)の方の反応はいかがでしたか。

八木:
映画が完成した時に試写会でお見せしたんですけど、自分たちの町が映画になって完成したものを観たときの感動と、町がこんなにきれいだったんだということを再発見できたということで、ものすごく喜んでくれました。
松川町にはいま応援団みたいなものが結成されていて、みなさん一生懸命普及活動をしていただいてます。

――今回の作品は八木さんが初監督&竹内さんが初主演ということですが、裏話的なことはありますか。

竹内:
監督と役者といっても、マネージャーと芸人という関係性は変わらないので、僕はおかしくてしょうがなかったですね。
現場ではものすごい人数のスタッフさんが動いてて、「監督どうしましょう」「主演の竹内さん入りまーす」とか、監督が「じゃあいきましょう」とかやってるんですけど、僕自身は「なにをやってるんだろう俺たちは」とどこかちょっと俯瞰で見るというか、内心「こんなことになるとはねぇ、八木さん」ってそこはちょっと楽しんじゃって(笑)、ずっと少し半ニヤケな感じで撮影をしてました。楽しかったですね。

八木:
僕は竹内くんにはなんでも言えるし、竹内くんもなんでも聞いてくれるんで、お互いに遠慮した部分も別になくて、一緒に作りあげていった感じですね。

竹内:
普通の撮影現場では、役者が監督に「わかりません!」「できません!」って言えないと思うんですよ。

八木:
「あれとってきて」というのも普通にありましたね(笑)。

竹内:
「この人は監督だから」ってスタッフさんにに言われたりして(笑)。
まず「監督」と呼ぶところから始めないといけないというところもありました(笑)。

八木:
その関係性がよかったかもしれないですね。
スタッフさんも同様で、今回は時間がなかったり、お金もなかったりという中で作ったんですけど、カメラマンが僕の大学の同級生とか、照明は先輩とか、わりと馴染みの人が多かったんですね。
これだけお互いがお互いのことを知ってて、いろんなものが足りない中でもベストを尽くそうとひとつのチームとなってやれたというのは、作品としてはすごくいいことだったなと思いますね。たいへんでしたけど。

――主人公の実には吃音という設定がありましたけど、演じる上で難しさはありましたか。

竹内:
ここはちゃんとやらないといけないなということで、参考になる作品を教えてもらったり、実際に吃音の方にお会いして取材をさせていただきました。
相手によって、状況によって吃音の度合いが違ってくる、といったいろいろなことを教えていただいて、1つ1つのシーンを監督と確認しながら作りあげていきました。

――今回の作品には竹内さん以外にもお笑い芸人の方がたくさん出演されていますね。

八木:
普段のネタからは伝わらない、別の魅力を引き出したいと思いました。
「日本エレキテル連合」の橋本さんは、普段は白塗りして狂ったような役なんですけど、実はすごく美しくて繊細な部分を持っていて、それをみんなに知ってほしいというのがありました。
相方の中野さんも普段はおじさんの格好をしてはしゃいでる感じなんですけど、彼女が持っている色気みたいなものであったりとか、そういった魅力を引き出すことには結構こだわりました。
そういう意味で、普段はマネージャーをしているからこそ見えてくるものがあったと思います。

――橋本さんは結構シリアスな場面でネタをぶっこんでますよね。

八木:
そうですね、あれは僕が言わせました(笑)。

――最後に作品をご覧になる方にメッセージを。

竹内:
この映画はたくさんの芸人が出てきますけど、すべて本物の芸人が演じています。
これはなかなか珍しいことだと思いますし、芸人という人間が普段どのように過ごしてるのか、またリンゴ農家の姿がすごく見える作品になっていますので、そういったところを見てもらえたらと思います。
夢に向かって負けずにまっすぐ進んでいく姿をがんばって演じましたので、映画館で見ていただけたら嬉しいなと思います。

八木:
青春映画ではあるんですけど、お笑いがたくさんつまった映画でもあります。
この作品を通して、やっぱり人が人を笑顔にするということがどれだけ大切で、素晴らしいかということを大きなスクリーンで見ていただけたら嬉しいですね。

『実りゆく』

監督・脚本/八木順一朗
出演/竹内一希、田中要次、田中永真、橋本小雪、鉢嶺杏奈、島田秀平、小野真弓、三浦貴大、爆笑問題(特別出演)、山本學
https://minoriyuku-movie.jp/
©「実りゆく」製作委員会